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最終更新日:2018/02/24

漫画講座


「漫画」の描き方ページ。


目次

 この漫画講座は、主に京都大学漫画研究部(以下、京大漫研)において新歓期に見学者に配布している資料として継続的に用いられることを目指して作ったものであります。しかし、その内容自体は極めて普遍的なものであり、京大漫研にかぎらず他の漫研、イラストサークル、また個人で漫画を制作する上でも用いることのできるものであると考えています。つきましては、この漫画講座を記す上で、「漫画製作の」初心者の方々に円滑な製作を助けるものとなるように努めています。


◆「絵」とか「漫画技法」とかの講座ではない

 最初にことわりますが、この講座はあくまでも「漫画」を完成させることだけに重点を置いています。たとえば、「どうすれば正面顔のバランスが整いますか」とか「背景の描き方を教えて」というような要望には対応していません。「トーンの適切な使い方」や「擬音の字体」のようなことの説明もしていません。というか自分が知りたいです。

 自分の絵に自信がない人でも気軽に漫画を作成してほしいと願ってこの講座を記しています。また、すでに巧みな絵を描いているのに規格の煩雑さ故漫画の作成を躊躇っている人の助けになることも期待しています。そんでおれがみんなの漫画を参考資料にしたい


◆なぜメソッドが存在するのか

慢心抜きで、漫画とは一種の芸術であるといえます。しかし芸術であれば、規範に囚われないものであるという考え方も存在します。現在の日本においては、漫画とは用いる道具、規格、全体の流れまである程度「規範」が成立しています。最初に述べた考えからすれば、これはまったく不自由であるものに見えても仕方ありません。漫画は、実際かなり不自由なものです。

 しかしルールが成立していることは同時に漫画を普及する手助けにもなっています。仮に突然、日本の漫画家が一斉蜂起してまったくバラバラの規格で原稿を入稿するとどうなるでしょうか。おそらく、これまでのように怒涛の勢いで雑誌・コミックスが刊行されることはなくなるでしょう。それは、書籍形態で刊行する上では、原版の規格が統一されていることが前提になるからです。すなわち規格が統一されていることで、編集する人が書籍にするために行うレタッチが最小限に抑えられるのです。これは画材でも同じことが言えます。

 自己完結的な同人誌においても、最終的な印刷は同人誌の印刷会社に依頼するのが基本になります。その時にも、規格が不十分であると印刷会社側の作業が増え、最悪の場合印刷をキャンセルされることもあります。また合同本やアンソロジーなどの共同企画などでは、規格の統一を破るとこれまた編集担当の人が行う作業量が増え、トラブルになることもあります。そういうわけで、規格を覚えておくということはなかなか重要なのです。仮に画材などでこうした規格を意図的に破る場合でも、製作側で相手にレタッチ等の負担をかけないように心がけると、優しい世界が生まれます。

一…規格

 規格は京大漫研ではかなり重要です。というのも、規格を守らない入稿があると製本時に不自然な頁が発生してしまうからです。また、それを避けるために編集側が独自にレタッチを行ったりする必要も生じます。いずれにせよ、序文のとおり相手に必要以上の負担をかける原稿作成はなんというかつらいので、思いやりの心を持って漫画原稿を作りましょう。


◆アナログの規格…漫画原稿用紙

 漫画原稿用紙はアナログで漫画を描くなら、もう必須と言ってもいいくらいの紙です。ので本形式にしたい漫画を作るときにはまず買いましょう。画材屋、アニメイト、東急ハンズ等で販売されています。あとふつうに通販でも買えます。厚さ、会社はお好みで。

 覚えておくべきは、原稿用紙のサイズが二種類あるということ。

 A…同人用。A4、仕上りB5
 B…投稿用(商業用)。B4、仕上り220mm×310mm(A4ではない。注意)

 読んで字のごとく、同人誌の製作には①を、商業誌への投稿、またプロ原稿の作成には②を用いる。が、描ける範囲が広く細かく描けるので同人でも②を使う人もそれなりにいる。
漫研では、風車小屋に②を、その他のコピー本に①を使う。名簿、ゴージャスなどは全て①である。

 サイズこそ違うが基本構造は同一である。以下、図解。

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A…基本枠(内枠)。一番内側の破線。一体何が基本なのかというとコマ割りの基本。なので、基本的にはここより内側に漫画を描くことになる。が、ここで疑問が生じる。後述。

B…裁ち切り線(仕上がり線)。Aの外側にある実線。その名の通り、ここで裁断されてしまうので、ここより外側にあるテキストや人物は当然見切れる
 また、キンコーズなどで自家製本するコピー本の場合、印刷されたものは実際の原稿より、仕上がり線の内側5mm程度さらに余白となり出力されない
 以上の理由で、切れてはいけない写植や絵は、この線より十分内側に配置することを心がける。

C…外枠。直接漫画作成に関わることは少ない。ただし、目盛りが存在しコマ割りの間隔の参考になるほか、基本的な四段分割、三段分割、左右分割のガイドも存在する。コマ割りをする時は、定規をあてる時の目安にできる。

D…トンボ。四隅、また四辺の中央に存在する。四隅の方が重要。
 四隅のトンボは裁ち切り線の延長線上に存在し、裁断の目安になる。すなわち、漫画製作においては、ここを残すことが重要である。
 Aで生じた疑問として、概ね大抵の漫画は基本枠を超えたコマ割りを用いているということがある。これをタチキリコマ(タチキリ)と言い、画面外まで全て絵で埋めることでなんか色々表現できる技法である。これを行う場合、Bで挙げたように重要な情報が切れないような配置をすることと、さらにベタ、トーンなどでトンボが隠れてしまわないことが大切である。あと、アナログで印刷所に入稿する時は、トンボをミリペンなどでなぞっておくとスキャン後も消えないので印刷ズレの心配が薄れる。

E…ノンブルガイド。あんまり重要ではないその1。アナログで印刷所に入稿する場合、ノンブルを貼ることになるのであるが、だいたいここらへんに貼ると商業誌っぽく位置が揃った端正なノンブルになるよという、そんな感じのものである。風車小屋では実際にアナログでノンブルを貼っていくので、参考にはなる。

F…情報記入欄。あんまり重要ではないその2。言うまでもなく作品名、作者名、(作品単体の)ページ番号を書いておく欄。重要ではないのだが、ここを書いておくと入稿したあとページを組む上で整列しやすいし、目次もつくりやすい。要するに書いてあると編集作業が捗る。特に風車小屋。なので、書いてほしいです。


◆デジタルの規格

 デジタルはクセモノである。というのも、デジタルの良いところはサイズに囚われていないからである。そんなわけで、デジタルは常にサイズ規格との闘いである…と個人的には思う。
ただ、デジタルで漫画を描くことがなくても、アナログをデータ入稿する際にはかならずデジタルソフトを使う。そんなわけで、デジタル規格も覚えておくと便利。

 2018年現在、漫画製作におけるデジタルソフトはコミスタから発展したCLIP STUDIO PAINTがほぼ覇権と言っていい状況である。クリスタを用いれば基本的に漫画原稿のサイズを誤ることはない。が、勿論クリスタを使うことが漫画の義務ではないので、例えばSAIやPhotoshop、メディバンペイントを用いる人もいる。なので、全てに使える説明を心がける。

A…解像度。基本的にPNGかPSD(か、PDF)でデジタル原稿は出力することになるが、印刷会社などで推奨されるのはPSDである。PSDなので、解像度は非常に重要な概念である。ミスると変な拡大率で出力されてしまう。
 今のところ、推奨解像度として、カラー350dpi、白黒(またはグレー)600dpiが基本である。
 また白黒かグレーかの話だが、基本的には白黒推奨である。コントラストが上がるので、きたないグレーになりがちだからです。グレスケはトーン化してあったりすると嬉しいかもしれない。

B…サイズ。アナログ基準で。mm単位でのカンバス設定ができるソフトではmmでやったほうがよい(px基準では解像度でサイズが変わるため)。

C…書き出し時に残しておくもの。トンボのみ。アナログ原稿の基本線は薄い水色のことが多く、コントラスト強めのスキャンをすればすぐ消えてしまう。が、デジタルはそうはいかない。基本枠も裁ち切り線も、すべて残ったままになってしまうので、謎の線などを現したくなかったら必ず消すこと。

D…書き出し。PSDの場合、レイヤーは最小限まで統合する。デジタル編集のときにでかいPSD開いてソフトが落ちたとかになるとシャレにならないしそうでなくても重いので思いやりを持ちましょう。
 あと、京大漫研においては、コピー本のデータは裁断済みの状態で提出してくださると楽です。

E…クリスタを用いた規格。クリスタは漫画製作に重点を置いてるソフトだけあって原稿設定ができて便利です。ファイル→新規を開き、用途をコミックにします。製本サイズはアナログにおける同人用の場合B5に、投稿用の場合商業誌用にしたら勝手にサイズを合わせてくれます。ただしもちろん解像度も設定すること。そんで新規ファイルを作ってその画面で表示→トンボ/基本枠をクリックするともうアナログ原稿用紙のような枠が出ます。これも一応すぐ下にある設定で製本サイズに合わせて下さい。出力時はトンボにチェックを入れ、基本枠のチェックは外す。もしくは、最初から書き出し時に「トンボの内側で出力」にしておくと製本サイズでトリミングされる。

二…器具

 アナログでは、よくボールペンは原稿を描くのに適していないというような話があります。なぜでしょうか。というのは、ゲルインクボールペンではないボールペンの描線と、ミリペンやつけペンなどの描線を見てみると、ボールペンの描線は線がやや薄いことがわかります。基本的にアナログの原稿は、とりわけちゃんとした製本を行おうとするほど、スキャン時のコントラストを上げ、白いものは白く、黒いものは黒くするのですが、どっちつかずだとどうなるかわかりません。つまり、ボールペンの線は黒さを保証できないので黒のままになるか、白く消えてしまうかばらつきがあるので、あまり原稿作成に適していないということです。同じ理由で、鉛筆など以ての外ということもわかります。


◆アナログ画材

A…つけペン。漫画といえばこれをイメージする人は多い。基本的につけペンとは、ペン軸、ペン先の二つに別れ、さらにインクにつけて描くものである。
 ペン先は様々であるが、漫画に使うのはGペン、カブラペン(サジペン、スプーンペン)、丸ペン、スクールペン、日本字ペンなど。引く角度など、慣れるまでやや時間がかかる。あと筆圧が強いと紙が削れていったりもする。そしてペン先(特に丸ペン)はお金がかかり、管理も必要。でも、筆圧などで太さを変えることができたりと変幻自在な描き味は長きに渡り愛されているだけある。

B…ミリペン。描線は基本一定だが、抜きが可能。ピグマとコピックマルチライナーが主流で、0.05mm〜1.0mmらへんまで広くカバー。筆圧が強いとペン先が割れたり潰れたりして、インクがなくならないうちから使えなくなるハメになる。またつけペンよりインクが染み込まないので、消しゴムをかけるとどんどん薄くなっていく。でも安定した描線でなによりどこでも気軽に使えるのでライト勢からプロ(青山剛昌とか沙村広明とか)までつけペン以上の支持を得ている。

C…その他のペン。コマ割りでキレイな線を引きたいみたいな人には、ロットリング(のイソグラフやラピッドグラフ)やカラス口などの製図用の筆記具がある。高いのですごくこだわりのある人が使って下さい。ボールペンはダメだという話でしたが、手描き文字とかくらいならゲルインキ程度であれば使えるかもしれない。が、書きはじめの部分が壊滅的に乾きにくくすぐかすれるので注意。

D…ホワイト。描線の修正に使う。あと、コマをはみ出す擬音やフキダシを描く時にも枠線を消せるので便利。黒地の時の描線としても使える他、髪のツヤ出しにも使える。便利。

E…その他の画材。スクリーントーンや雲形定規など色々あるが、正直もう使っている人は少ない。


◆デジタル機材

 最近(2018年現在)の時流なので充実させてもいいかもしれない。

A…デバイス。いわゆるペンタブレット。タッチパッドに書き込む板タブレットと、モニタに直接描き込む液晶タブレットがある。後者のほうが直感で描けるとの評判であるが、いかんせん最安モデルでも6万〜8万となかなかの投資金額なので慎重に。また、パソコンという形状にこだわらなければiPad Proのような高性能タブレットを液タブのように使うことも出来る。月額制でクリスタもある。けど、これも結局高い。

B…ソフト。漫画描くならCLIP STUDIO PAINTという感じになってしまった昨今であるが、正直確かにクリスタが一番漫研向きな性能と価格。ふつうにPROで十分です。ワコムの板タブであるIntuos comicなら2年版が勝手についてくるのでデジタルを齧ると最初にお世話になるソフト。他にはコマ割りが出来るフリーウェアであるメディバンペイントや、昔からイラストをしていた人に親しまれているSAI、レタッチ界の王Photoshop等がある。

三…手順

 これまでの二項目と違い、特に決まりはない。というか、決まりを無視したところで規格違反になるようなものではないので、ある程度自由があります。とは言え、便利な過程というものは存在するので、覚えておくといろいろ便利だったりもします。


A…ネーム。人によってどこまでをネームと呼ぶかわりと変わるが、概ね作品全体の構想からプロット、脚本、大まかなコマ割りに至るまでの一連の過程でできるのがネームである。別にどんな紙に書いてもいいし、書かなくてもいい。というくらい、おおらか。

B…コマ割り。アナログでコマ割りをするとき、定規の斜めの部分を逆さにして当てると描線のインクが隙間に染み込んでイヤなかすれ方をするということがなくなり幸せ。

C…下書き。鉛筆メイン。消さなくていいので水色のシャーペンでやる人もいる。ここの線が濃いと、消しゴムかけるのが面倒だしミリペンがすごい勢いで消えていく。BとCとは逆、というか同時にすることもある。

D…ペン入れ。気合。

E…仕上げ。トーン、描線修正、ベタ塗り、写植など。アナログだとめんどくさいのでここだけデジタルという人はかなり多い。というかもはややらない人のほうが少ない。

F…番外編。画材をゲットする方法であるが、京大近辺には造形芸術大があるおかげでわりと画材屋がある。百万遍から一番近いのがオレンジ画材、またかなりの大きさを誇るバックス画材は白川北大路にある。
 近所の画材屋以外となると、手っ取り早いのは新京極のアニメイトか四条東洞院の東急ハンズ。万が一なんにもない時は、通販(というか、Amazon)という手段もある。
デジタル画材になるとまず電気屋に限られる。板タブ程度であれば高野のコジマでも売っているが、液タブになると京都駅のヨドバシやビックカメラでないとない。iPadは両者の中間くらいの確率で売られている。これも詰んだら通販。

 ありきたりなことですが、この文章を書いているうちに、漫画をかき始めて数年たち、すっかり忘れてしまっていた小ネタなども思い出しました。つくづく慣れは脅威であると感じます。この文章がどれだけ原稿製作の助けになるかは正直アレなのですが、少しでも助力となれば幸いです。

補…漫画講座漫画

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2017年度の新歓本のために描いた漫画です。今見ると首が太い。あと色々情報が抜けている。

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