坂出人工土地のこと

20180913
画像はぜんぜん関係ないですね。

岡山は倉敷下津井と香川の坂出番の州を結ぶ瀬戸大橋の香川側、坂出市は高松以外の香川の自治体の例に漏れずありえないくらい空洞化が進み市街地は惨憺たる有様であるが、そんな坂出駅前にはこれまたすごい建築物がある。それが坂出人工土地である。

とはいえ建物自体はわりとありきたりである。想像してみてください、風呂なしオンボロ団地の直方体が何個か立ってる光景。道はガタガタで草は生い茂り、階段で鳥が死んでいる。意外とどこにでもありそうである。しかし、我々がこの場面を想像する時、正確に描き出すのなら2階にいなければならない。この団地は2階から始まっているのである。

1階レベルに商店が入っていて、2階から住居が始まる、という集合住宅の構造は別段不思議ではない。ところが、坂出人工土地においては1階と2階以上の建物の構造は根本的に異なる。すなわち、1階部分の商店+駐車場の上に敷地全体を覆うような天井を敷き、その上からいくつもの住居棟を建てていくわけである。こうすることで狭い敷地をまるっと住宅地として使うことができて、もともとあった街の様相を維持することができる、という理屈であった。ところが2階部分を新たな土地として登録することは不可能だったらしく、結局土地の利権の都合上こうした空中都市構想はここだけで終わってしまい今となっては昔の話である。

もうここができて60年近くなる。コンクリートの寿命が30年とか言われてるので、普通ならもう建て替えが視野に入っているだろう。ところがここは公営なのに(公営だから?)ほとんど手直しがされていないまま、あらゆるところが綻んでいっている。滅びゆく文明というか、一種のポストアポカリプスな雰囲気を味わえるというか、生きている軍艦島、とでも言っておこうかしら。